夏季大学2010


第44回夏季大学
テーマ:気象観測技術の最前線
日時:2010年8月7日(土)~8日(日)
場所:気象研究所講堂(茨城県つくば市長峰1-1)


講義内容と時間割

■ 8月7日(土)10:00~11:30 古くて新しい観測装置気象レーダーの話 鈴木 修(気象研究所)
21世紀に入り、ドップラー機能や二重偏波機能を備えた気象レーダーが実用化された。 しかし、気象レーダーは1940~50年代に遡る歴史を持つ、古い観測装置である。 この講義では、気象レーダーの仕組みとともに、近年の高機能化の流れの背景について話す。 また、ドップラーレーダーの画像を用いて、実際に、風向・風速や渦(メソサイクロン)等 の情報を読み取る実習を行う。

11:30~12:30 雲の種を探る 財前 祐二(気象研究所)
大気中の微粒子(エアロゾル)は、雲ができるとき水蒸気凝結の核になる。 それは、どこからきて、何でできているのか、雲にどのように影響するのかについて学ぶ。 また、午後の気象研見学時に、実際に電子顕微鏡で微粒子を観察する実習を行う。

13:30~15:00 見えないものを観る、掴めないものを掴む最新観測技術 -風の流れと雲-  藤吉 康志(北海道大学)
最近は存在しないものを見せてくれるバーチャルリアリティ流行りであるが、 一方、現実に存在するもので見えていないものが沢山ある。その典型が風である。 我々にとって風は、感じるものであって見るものでは無かった。 ところが最近、レーザー光を使って空気の動き(風)を3次元的に観ることができる 装置が開発され、我々もこの装置を使って観測を開始した。 講義では、我々の「風流から風雲の研究」の一端を紹介する。実習は、 ストロー、洗剤などを用いて「シャボンの中の雲実験」を行う。

15:30~17:00 気象研究所観測施設見学

■ 8月8日(日)

10:00~11:30 ライダーネットワークでエアロゾルの三次元的な動態を捉える 杉本 伸夫(国立環境研究所)
黄砂や大気汚染エアロゾル、森林火災の煙など、アジア大陸から輸送される エアロゾルの動態把握を目的として、自動連続観測ができる後方散乱ライダーを 東アジアの約20地点に設置して継続的観測を行っている。散乱の波長依存性と偏光特性から 水雲と氷雲、大気汚染性のエアロゾルと黄砂を分離して、それぞれの分布が得られる。 当日は、ウェブで公開しているライダーデータの見方について、印刷した画像を用いて 雲とエアロゾルの識別や、黄砂と煙霧の識別などの実習を交えながら講義を行う。

11:30~12:30 大気微量成分のデータ同化 関山 剛(気象研究所)
天気予報の分野で大きな発展を遂げたデータ同化の手法は、大気微量成分観測の解析にも 応用されつつある。いまや天気予報や気候変動予測の精度向上には、大気微量成分の挙動把握が 必須となっており、データ同化の果たす役割は大きい。 講義では、データ同化の概念を分かりやすく説明するとともに、ライダーデータなどを用いた数値モデルの データ同化の実例を紹介する。

13:30~15:00 国立環境研究所観測施設見学


■ これまで(第40回以降)の夏季大学のテーマ
第55回 2021年8月21・22日 海洋と日本の気象・気候~観測から予測まで~
第54回 2020年8月22・23日 雲の科学
第53回 2019年8月3・4日 降雪・積雪予測と雪氷防災の最前線
第52回 2018年8月4・5日 浸水・洪水予測と気象防災の最前線
第51回 2017年7月29・30日 新世代の衛星が切り開く新しい気象の世界
第50回 2016年7月30・31日 エルニーニョ現象と異常気象
第49回 2015年8月1・2日 地球温暖化入門
第48回 2014年8月2・3日 ザ・竜巻
第47回 2013年7月27・28日 台風学の最前線
第46回 2012年8月5・6日 北極温暖化と異常気象
第45回 2011年8月6・7日 気象観測技術の最前線(2)
第44回 2010年8月7・8日 気象観測技術の最前線
第43回 2009年8月1・2日 顕著現象の解析
第42回 2008年8月2・3日 気象のシミュレーションⅢ
第41回 2007年8月4・5日 気象のシミュレーションⅡ
第40回 2006年8月5・6日 気象のシミュレーション
過去の夏季大学 開催一覧(PDF)