第17回航空気象研究会開催のお知らせ


 航空機の運航に影響を及ぼす気象の観測,予報,情報提供などについて,気象学会レベルで広く交流し研究を促進するため,2006年3月に日本気象学会の研究連絡会の1つとして「航空気象研究連絡会」が設置されました.
 今般,同連絡会主催による第17回航空気象研究会は,新型コロナウイルス感染拡大防止のため,下記の通りZoomウェビナーを利用したオンライン開催とし,参加人数を100名に制限させていただきます。
 多くの皆さまにご参加いただきたかったのですが,都合により人数制限となりましたこと,深くお詫び申し上げます.

日  時:2023年2月10日(金) 13時30分~17時00分(予定)
開催方法:オンライン開催(Zoomウェビナー利用)
参加人数:先着100名
申込締切:2023年1月31日(火)
申込方法:下記申込み先アドレス宛てにEメールにて,件名を「第17回航空気象研究会申込み」とし,本文に「氏名」,「所属」を記載の上送付してください.
 ・件  名: 第17回航空気象研究会申込み
 ・記載事項: 「氏名」,「所属」
 ・申込み先: 航空気象研究連絡会事務局メール(metsoc_avi_2022@outlook.com)
       ※@は全角で表記していますので,半角に変換の上ご連絡ください.
       ※2022年からメールアドレスが変更となっております.
参加方法: 研究会へ参加対象になった方へ,後日,参加の仕方・注意事項等について記載した「参加用URLのご案内」のメールを送付いたしますので,そちらを確認の上ご参加ください.

<研究発表(発表順)>
1.日本空域の上層における中程度の強さの晴天乱気流の発生環境場の季節別特徴
伊藤創司(慶應義塾大学 政策・メディア研究科)

 航空機の安全な航行を妨げる主な要因として乱気流が挙げられる.様々な予測モデルが開発されているが、乱気流の発生位置・時間を精度よく予測するシステムはない.その背景には乱気流の発生メカニズムや発生時の環境場が完全にはわかっていないことが挙げられる.特に、日本上空を対象とした乱気流研究は非常に少なく、未解明の点が多く残る.
 そこで本研究では、過去の乱気流報告データ(PIREP)と気象再解析データ(MANAL)を用いて、日本上空の上層で発生した中程度の強さの晴天乱気流を対象として発生時の環境場を季節別に明らかにした.その結果、冬季では強いジェット気流のトラフ周辺で対象とした乱気流が生じやすく、強い鉛直シアーによってケルビン・ヘルムホルツ不安定が発生していたことが多いと示唆された.6月では、遭遇地点の下層で東西方向に伸びた強い帯状の収束場があり、強い変形運動によって発生していたことが多いと示唆された.また、収束場は梅雨前線の可能性があり、梅雨前線が乱気流の発生に寄与していることも示唆された.

2.北太平洋偏西風レジームの予測可能性と航空分野での利用可能性に関する研究
田中拓海(筑波大学 理工情報生命学術院) 
松枝未遠(筑波大学 計算科学研究センター)

 冬季北太平洋域の300hPa面東西風(U300)偏差を8つのJetレジームに分類し,レジームと日本–北米間の航跡(日本航空株式会社提供)の関係,および,Jetレジームの季節スケールでの予測可能性を調査した.飛行緯度偏差に対するU300偏差の線型回帰図から,東京発北米行きの便は平年よりも偏西風が強い領域を,北米発東京行きの便は平年よりも偏西風が弱い領域を選択して飛行していることが確認できた.また,東京–北米西海岸便の航跡は,東京–北米東海岸便の航跡と比較し,北太平洋の偏西風の東西/南北の変動に強く関連していた.また,Copernicus季節アンサンブル予報によりJetレジームの予測精度を調査したところ,強風域が日本付近に限定されるレジームで精度が最も高かった.特に,予報対象月がEl Niñoの場合,La Niñaの場合よりも予測精度が高い傾向にあり,
El Niñoの発生が北太平洋上の偏西風の予測可能性の向上に大きく寄与していることが分かった.

3.気象衛星水蒸気画像に現れたハイドロリックジャンプと強い乱気流
吉野勝美

 2020年3月5日と20日の朝9時頃,降下中の旅客機が吾妻連峰(最高峰の標高2035m)の風下,高度15,000~10,000ftにおいて強い乱気流に遭遇した.いずれの事例においても,静止気象衛星(Himawari-8)の水蒸気画像には,吾妻連峰の尾根付近から風下側にかけてハイドロリックジャンプと推定される「互いに接する一対の暗域と明域のパターン」が見られた.このパターンの一般流に沿った水平スケールはいずれのケースも約25㎞であり,奥羽山脈一帯の500hPa付近に安定層(前線)が位置し,山頂から安定層下面にかけた気層の平均風はWSWの約40~50ktと推定された.なお,同じ時刻には奥羽山脈の他のピークにおいても類似のパターンが観測されている.本研究会では,これらの事例の気象解析の概要を報告し,ハイドロリックジャンプに起因する突然の強い乱気流と気象衛星水蒸気画像によるその監視の可能性について触れることとする.

4.東北北部太平洋側の飛行場における海霧の流入タイミングについて
                         (2011年8月3日の事例研究)

伊藤 雅(防衛省 航空自衛隊 航空気象群 中枢気象隊 統合気象システム班)

 飛行場において海霧が流入すると、急激に視程の悪化及び雲底高度(以降シーリング)の低下が起こり、航空機の運航に影響を及ぼす.精密進入装置が整備されている飛行場では、視程不良の中でも着陸は可能だが、精密進入装置が整備されていない飛行場や小型機の運航にとって、視程の悪化やシーリングの低下は、急な目的飛行場の変更等の必要性が生じる.
 東北北部太平洋側において、海霧の発生要因や流入後の状態についての調査研究はなされているものの、流入のタイミングに関する研究は数少ない.本研究は、急激な気象状態の悪化を引き起こす海霧の流入タイミングについて、東北北部太平洋側の飛行場を例として調査した.
 飛行場の観測データから霧流入時の約3時間前に東風が強まっていたことがわかった.
 また、気象庁MSM解析値の編集データを基に事例解析を行ったところ、鉛直対流が強まることにより地上風速が大きくなっていた.飛行場での風速は海霧の流入速度よりも早く、上空の風が対流により地上に降りてくるため、霧の流入前に風が強まり、後に遅れて海霧が流入することが示唆された.

5.3D気象技術と被雷対策
神田安奈(全日本空輸株式会社 OMC オペレーションマネジメント部)

 航空会社にとって被雷は難敵の一つだ.航空機が被雷するとかなりの時間や費用をかけて点検や修理を行う必要があり,遅延や欠航につながることも多い.とりわけ冬季は航空機がトリガーとなって被雷することが多く,また冬季雷は夏季雷に比べ放電量が多い為,航空機への被害も大きくなる.誘発雷の回避には水平回避だけでなく鉛直方向への回避が有効であるがイメージを持ちにくいことが課題であった.その為,「誘発雷の予測技術(JAXA)」,「3D気象描画技術(エムティーアイ)」,「被雷回避ノウハウ(ANA)」を合わせて3次元的に被雷回避を行う為のアプリ(3DARVI)の共同開発を行っている.
 このアプリで被雷危険領域を可視化しパイロットは飛行前に回避イメージを確認,飛行中は運航支援者を経由し回避のためのアドバイスを実施することで「被雷ゼロ」を目指して取り組む.

6.雷3次元観測ネットワークシステムを活用した雷情報発信について
櫻井南海子,清水慎吾,宇治 靖,鶴見優作,岩波 越(防災科学技術研究所)

 防災科学技術研究所では,雷3次元観測ネットワークシステムを首都圏に構築し(Tokyo LMA),2017年4月よりトータル雷観測を行っている.Tokyo LMAで取得した雷情報のリアルタイム公開を2020年から開始したので,本発表では3つのリアルタイム雷情報表示について紹介する.一つは,雷3次元情報を水平面に2次元投影したソラチェクである.ソラチェクは,5分間隔更新,GIS表示形式で,風,雨,ひょうの情報と一緒に公開している特徴がある.もう1つは,雷3次元情報を1分更新,3次元表示で公開しているTokyo LMA WEBである.高頻度更新と雷の高度情報が分かる点が特徴である.3つ目は,未公開ではあるが,雷3次元情報を秒単位で更新し3次元表示するLiveLMAという機能である.LiveLMAは前2つと異なり,閲覧者のパソコンで雷データを直接受信し表示する.
 本発表では,これらの雷情報表示の詳細を紹介するとともに,航空機運航等への利用可能性について議論させて頂きたい.

7.二重偏波レーダー及び雷3次元観測システムを用いて考察する夏季積乱雲内部における降水粒子と電荷構造の対応
梅原章仁(気象庁気象研究所,筑波大学大学院)  
櫻井南海子(防災科学技術研究所)        
吉田 智(気象庁気象研究所)          
林 修吾(気象庁気象研究所)          
清水慎吾(防災科学技術研究所)         
山内 洋(気象庁気象研究所)          
出世ゆかり(防災科学技術研究所,筑波大学大学院)

 航空機の安全運行に大きな影響を及ぼす雷は,積乱雲内部の電荷領域を中和する放電現象である.多くの夏季積乱雲内部では,上層から下層にかけて正・負・正の三重極構造となることが知られており,特に,負電荷と下層の正電荷領域は負極性落雷発生のために必要とされている.これら積乱雲内部の電荷構造は,主として霰と氷晶の衝突による電荷分離(着氷電荷分離機構)の結果として形成されると考えられているが,下層正電荷の生成機構に関しては,まだ十分には明らかになっていない.
 そこで,本研究では,下層正電荷に注目して,二重偏波レーダーから推定した降水粒子分布,三次元放電路観測システム(Tokyo LMA)から推定した電荷分布,及びデュアルドップラー解析で求めた上昇流域とを比較した.その結果,上昇流域の下層正電荷は,霰よりも雨水に関連した降水粒子との対応が良かった.一方で,下降流域の下層正電荷は,雨水に関連する粒子よりも霰との対応が良かった.
 発表では,これらの結果を合理的に説明可能な電荷分離機構について考察する.


問い合わせ先:航空気象研究連絡会事務局(metsoc_avi_2022@outlook.com)
※@は全角で表記していますので,半角に変換の上ご連絡ください.
※2022年からアドレスを変更しておりますので、ご確認ください。