「気象学の研究・教育の状況と展望−21世紀への新たな貢献に向けて−」
    第19期日本学術会議気象学専門委員会対外報告書

             要旨

1. 報告書の名称  気象学の研究・教育の状況と展望 ―21世紀への新たな貢献に向けてー 2. 報告書の内容 (1)作成の背景   気象学は、現在では、地球惑星科学および環境科学等のほぼ全体に関係する極めて 広い内容を包含する研究分野になっている。また、天気予報技術が大規模観測網と超 大型計算機の登場で成功を収めたことから、気候予測技術の開発への関心が高まり、 より幅広い関係分野との密な交流が必要になっている。このような気象学の動きと重 なり、種々の地球環境問題が社会の大きな関心事になり、地球環境変動に対する科学 的理解の基礎を固める必要が急務になっている。  気象学の研究や教育の現状をみると、個々の研究者や教育者の対応には現実的で適 切な対応がみられるものの、必ずしも気象学全体の展望という点では取り組みが十分 でない面もみられる。こうした点を気象学とその関連分野において見直す必要があ る。 (2)現状と問題点  これからの気象学にとっては、地球温暖化や気象災害という社会的に重要な緊急課 題に応えることが特に重要である。そうした課題の科学的基盤の構築には気象学がリ ーダーとしての役割を果たさなければならない。  また、そうした応用研究と並んで、気象や気候の基礎研究の継続と深化を着実に推 進するとともに、学生の基礎学力不足や就職問題など、問題が表面化しはじめており 改善が必要であることから、気象学の専門教育の強化が不可欠である。 (3)改善策、提言等の内容  以上の検討結果に基づき、本報告書では、気象学の研究と教育に関して、次のよう な提言を行っている。 1)地球温暖化を予測するための継続的基幹研究拠点の設置 2)集中豪雨の予報精度を上げる研究の強化 3)国境を超えた大気汚染物質の長距離輸送・拡散の研究 4)局地気象や都市のヒートアイランド現象の研究 5)地球環境の地上観測網と人工衛星観測の連携と拡充 6)大気観測の専用航空機の確保 7)気象学と関連分野の基盤を深化させる研究の充実 8)研究後継者の育成を強化するための専門教育  これらに対しては、個々の立場と同時に、全国的な規模での協力的、且つ、統括的 な取り組みが必要である。