第28期第2回評議員会議事録

日 時

 1996年1月23日 17時30分〜20時40分

場 所

 千代田区立中小企業センター(東京都千代田区神田錦町)

出席者

 五十音順,敬称略
(評議員)
朝倉正(日本気象協会),内嶋善兵衛(宮崎公立大学人文学部),加藤央之(電力中央研究所),佐藤薫(京都大学大学院理学研究科),二宮洸三(気象庁),三輪洋次(文部省初等中等教育局),椋尾尚司(気象業務支援)
浅井冨雄氏(広島大学総合科学部),沖大幹氏(東京大学生産技術研究所)は欠席
(名誉会員) 
岸保勘三郎,山元龍三郎
(理事長)
松野太郎
(理事長代理)
関口理郎
(理事)  
礒部,大西,小倉,斉藤,白木,竹内,田中(博),永田,中村,新田
(監事)  
岩崎,高谷
(来賓)  
真鍋淑郎(米国地球流体力学研究所)

議 事

1.理事長挨拶

 評議員ならびに名誉会員の皆様には,お忙しい中をお集まりいただきありがとうございます.また,気象学会から推薦を行い,今回,朝日賞を受賞された真鍋会員には,私どもからお願いして臨席していただいております.

 昨年の評議員会では,気象学会がより広い応用分野に活動域を広げることや,気象庁と大学の研究室といった閉じられた世界の人間だけで運営している現状を改善することなどが今後の課題とされました.この評議員会に先立って先ほど行われた常任理事会で新入会員の入会を承認しましたが,気象官署の人は少数で,会社員といった人たちが大半を占めています.これらの幅広い会員の要望にどう応えていくかが課題であると認識しています.まもなく役員の改選が行われますが,前回から導入された推薦制度を活用し,気象学会にとって必ずしもファミリアーでない人にも理事に加わっていただくことを考えています.

 もう一点,昨年の評議員会では,大会での講演発表時間が短いということが指摘されました.これについては後程,講演企画委員会担当から話があると思いますが,春か秋の大会のうちの一回は分科会方式として時間をとった議論ができるように試みたいと思っています.

 本日は,また新しい観点から気象学会の運営についての御意見をいただきたいと思います.

2.気象学会の主な新規活動について

(1)地球環境科学関連学会協議会(仮称)の設置,(2)文部省学術情報センターの電子図書館システム試行への協力,(3)学術情報センターのWWW資源提供サービスを利用したインターネット上の気象学会ホームページの開設,(4)「教養の気象学」の改訂,(5)「気象科学事典」の出版,(6)春季・秋季大会の持ち方の見直し,(7)1996年度事業計画案について,それぞれの担当理事から説明.

 特に大会の持ち方の見直しについては以下のような議論があった.

(真鍋会員)
ここでいう分科会と,現在のセッションはどこが違うのか
(白木理事)
現在のセッションは,申し込みのあった講演希望を講演企画委員会が適当にまとめたもの.分科会方式では,分科会のテーマとコンビーナーをあらかじめ決めておき,分科会ごとに講演を募集することになる.現在のスペシャルセッションがこれに近い.分科会では講演時間を長くとるため,現在の第一種に相当する短い講演はポスター発表となる.
(二宮評議員)
大会発表が1年に700件もあるのに,気象集誌に投稿される論文が100編程度しかない.外国の雑誌等に投稿されるものがあるとしても少ない.講演申し込みが増えて討論時間が足りないのを解決するために,ここで提案されている方向で大会の持ち方を議論するのはお役所的発想であり,むしろ問題は研究発表がなかなか論文にならないシステムの方にある.
(松野理事長)
大会での短い発表が「自己紹介」で終わっている.ただ,そのような実状でも特に苦情が出ていないことも事実.
(二宮評議員)
自己紹介でも,面白い発表があれば後で個人的にコンタクトすればよいので意味はあると思う.システム的に短い発表を排除せよと言っているのではなく,論文にならなくても放置している大学の指導教官や研究機関の雰囲気が問題.

3.評議員,名誉会員からの発言の要旨

【二宮評議員】
気象学の対象範囲,会員のバラエティ,会員の興味の幅が広がってきており,もっと広い会員層を念頭においた学会運営をしていかねばならない.地球環境問題での協議会の設置など大変結構なことと思う.学会としての国際活動にも気を配ってもらいたい.機関誌『天気』の性格であるが,お知らせ,論文,解説などを合わせ持っているので難しいとは思うが,アメリカ気象学会の Bulletine はこれらの記事が分かりやすくビジュアルに書かれていおり,われわれのような気象を職業とするものにとっても面白い.『天気』の場合はそのような印象を持たない号もままある.編集者よりも投稿者の方に問題があるのだろうが.
(関口理事)
前の編集長も苦労したがなかなか改善されない.さきほどの常任理事会でも議論になったが,気象協会の『気象』との比較でみると,お願いをしてもなかなか面白い記事がタイムリーに出てこない.気象庁での扱いが『気象』は業務の一環,『天気』は個人の仕事となっていることによるのではないか.
(朝倉評議員)
『気象』はそれを職業とする編集担当者がしつこく原稿を督促するが,『天気』はボランティアの編集委員がやっていることの差だと思う.また,レフェリーのない『気象』の方が書きやすいということもある.
(真鍋会員)
アメリカで読んでいる私には『天気』も日本の動きなども分かって面白い.
【内嶋評議員】
昨年に比べて気象学の関連分野での気象学会の活動枠が広げられたようで喜んでいる.もっと環境工学などにも働きかけを強めてほしい.『教養の気象学』はずいぶん使わせてもらった.改訂版が出るということなので楽しみにしたい.内容については,純粋科学的なものだけに限定せず,予報などの気象技術の分野も含めて,技術の分野でもスタンダードになるものを学会として作ってもらいたい.大会の持ち方に関しては,農業気象学会でも300程度の研究発表があるが論文になるのは10%程度で自己紹介的なものが増えている.いかにして学会誌に導くかについて編集委員会でガイドラインなどを作ってやってはいるが,なかなかうまくいかない.農業気象学会の場合は要旨集でも研究業績としてポイントになるし,支部会誌も立派なものが多く,そこで発表がストップしてしまい,レフェリーから注文を付けられる学会誌まで上がってこないという同じような悩みがある.
(永田理事)
学会誌には予報技術に関する論文がほとんど投稿されない.このような現状では教科書を企画することは難しい.また,予報技術は日進月歩するものであるために頻繁な改訂が避けられず,ある程度長く使う教科書の性格と合わない.
(松野理事長)
気象庁の地方官署での研究成果は『研究時報』などに投稿されるのであろうが,最近は投稿数が減少していると聞く.これらの機関誌の編集を気象庁と気象学会が共同で行うことはできないか.
(小倉理事)
アメリカでは『Weather and Forecasting』という予報技術に関する雑誌を気象学会が出しており,ちゃんと続いている.
(真鍋会員)
『Monthly Weather Review』は以前はNOAAが出していたが,予算の制約で気象学会に移管された.現在はNOAAにはこの種の出版物はない.
(二宮評議員)
(日本で地方を含めた予報現場からの論文が少ないのは)予算の問題というよりはアクティビティの問題だと思う.
(高谷監事)
気象庁の図書資料管理室で『研究時報』,『欧文彙報』,『測候時報』,『技術報告』の編集に携わっている.学問的なものは学会へ,気象業務に直結したものは私たちの雑誌へ投稿して下さいとお願いして原稿集めを行っている.
『欧文彙報』は気象集誌との棲み分けを鮮明にしてからは,投稿数が増えて予算をオーバーするほどである.WMOの国際会議に別刷りを持参して重宝がられた例もある.気象庁では地方気象台までパソコンを配備したり,電子媒体でデータを配布する体制ができつつあるので,地方での研究環境が良くなり,『測候時報』への投稿が活発化するのではないかと期待しているところである.『測候時報』も最近の気象庁の技術革新に伴い,原稿が増加してきている.気象庁職員の気象学会に対する関心は薄くなりつつあるように見える.それは,気象業務に関連した開発の仕事に携わっているものが,気象学会からあまり利益を得られないからではないか.民間での気象業務が活発になり,気象庁でも技術革新が進む情勢の中で,気象学会側で包容力をもって気象業務に直結した研究開発にも価値を見いだしてくれるようになれば,もう一度,気象学会と気象庁の麗しい協力関係ができる時代が来るかも知れない.
【朝倉評議員】
著作権上の問題があるかも知れないが,面白い論文が気象庁の出版物に掲載されれば,それを『天気』に転載すればよい.日本気象協会所属の気象予報士と気象学会員の関係を調べてみると,第1回の予報士試験の場合は合格者のうちの半数以上が学会員であったが,第2回以降は43%,20%,10%と回を追うごとに比率が下がっている.ある意味では,学会員のなかで予報士の資格を取る気のある人は取ってしまったとも言える.気象協会で予報士資格をもっている人の何人かに聞いてみたところ,20〜30代の人は誘いがあれば気象学会に入りたいと考えいるが,40代以上の人は今更入らないとの答えであった.ある人などは「私のようなものが学会に入る資格があるのでしょうか」という受けとめ方であった.気象学会は魅力はあるが敷居が高いようだ.もう少し身近に感じてもらうためには,『天気』や大会のセッションなどに Broadcasting Meteorologist のための場を作ってもらえないだろうか.
【椋尾評議員】
『気象新聞』という5000部程度の月刊紙の編集を担当している.予算上の問題もあるが,まもなく旬刊か週間にしたいと考えている.先日は松野理事長に登場していただき,開かれた気象学会という点を強調していただいた.あの記事を読んで入会してきた人があったと聞いて非常にうれしい.気象学会が伝えたいとお考えのことがあれば,『気象新聞』の紙面を活用していただきたい.
今週末からアトランタで開かれるアメリカ気象学会の総会に参加し,取材をしてくる.日本との違いなどを見てきたい.
【加藤評議員】
電力中央研究所は産業界に属する研究機関であるが,最近は気候問題にも興味を持って取り組んでいる.以前,NCARなども参加した MECCA ( Model Evaluation Consortium for Climate Assessment) というプロジェクトがあり,気候モデルの評価を行ったが,今度は ACACIA (A Consortium for the Application of Climate Impact Assessments) というプロジェクトが開始され,温暖化に伴う影響の評価を官民の協力で行うことになった.大循環モデルでは解像度が粗すぎるため,大循環モデルの結果をもとに地域的な気候変動の影響を見積もることなどをテーマにして産・官・学が一体となった学際的な研究を進めようとしている.気象学会では環境科学関連学会への呼びかけを行われるということで,大いに歓迎したい.シーズとニーズが合致した活動だと思う.
【佐藤評議員】
昨年は女性研究者に対するアンケート結果を報告させていただいた.もうひとつ強調したことは,気象集誌をインターネットを通じて国際的に宣伝してほしいということであった.今回,里村理事から ymnet を通じてこの件についての意見照会があり,若手から活発な意見が出された.学会のホームページは,将来は『天気』などの機関誌と同じくらい重要になる可能性があるので,その運用については若手の意見を取り上げてもらいたい.将来,アニメーション等を含む学会誌の電子出版も考えてみてはどうか.女性研究者の比率でみると,理工系に限ると日本5%,アメリカ10%,ヨーロッパ20%とヨーロッパがずっと進んでいる.アメリカに出張する機会があり,そこでフランス人研究者になぜ女性が多いかを聞いたところ,フランスでは以前に経済的に厳しくて共働きでないと生活できなかった時期があり,当時は研究者はエンジニアに比べて給料が安かったために女性が進出しやすかったとのことであった.フランスでは働く女性が増加してきたことに合わせて,たとえば3歳以下の子どもがいる場合には休職できるとか,就職の年齢制限も,男性が30歳なら女性は33歳などの配慮があり,女性が働きやすい社会制度が整備されてきたとのことであった.就職・昇進差別がある日本と比べて違うなと思った.自分自身は就職差別を感じたことはないが,これは気象学会のよい体質といえるのだろう.これから若手女性研究者がますます増えてくると予想されるが,今後も差別がなければよいと思う.
【三輪評議員】
現在,中央教育審議会で21世紀を展望した教育の在り方という大きなテーマが議論されている.このなかでは,(1)今後における教育の在り方及び学校・家庭・地域社会の役割と連携,(2)一人一人の能力・適性に応じた教育と学校間の接続の改善,(3)国際化,情報化,科学技術の発展等,社会の変化に対応する教育の在り方が諮問事項になっている.具体的には,(1)は学校週五日制,(2)は中高 一貫教育や一人一人の能力をどう伸ばすか,(3)は若者の科学技術離れなどが議論されている.これらの問題に関して研究者や学会がもっと関心を持ってほしい.物理学会などでは,中教審に対する働きかけなどを行っている.気象については子どもも感心があり,理科好きな子どもを増やし育てるため,学会がコンクール的なことをやってはどうか.日本化学会は「化学教育」という雑誌を出しているなど,教育分野でも活動しており,気象学会でも教育分野での活動強化をお願いしたい.
(大西理事)
きょうは報告しなかったが,地学教育学会からの呼びかけに応えて地学関連学会の連絡協議会に参加し,これまで数回にわたって中央教育審議会等への働きかけをどうするか話し合っている.また,今期の理事会では具体化できなかったが,気象予報士制度との混乱を避けるために一時凍結していた気象学会独自の気象技能認定制度の検討も再開する予定であり,このなかで子どもたちに何か資格的なものを与えることも検討することになると思う.
【岸保名誉会員】
名誉会員にしていただき有り難うございました.きょうは特に発言することもないが,大変に面白い話を聞かせていただいている.
【山元名誉会員】
名誉会員になると学会発表もできなくなるのではとも思ったが,有り難くお受けした.最近は学会の運営について一歩離れたところから見ている.先日,福井大学に講義に行く機会があったが,かなりの学生が予報士試験を受けたいというので驚いた.我々のようなロートルは肩肘を張らない原稿を書いたり,ポイントだけの話ができるようになるものだ.『教養の気象学』もいいが,たとえばアメリカの Weatherwise のような,もう少し低いレベルの読者を対象にした本も考えてほしい.これからは応用気象的な分野が重要になると思われるので,どちらかというとアカデミックな分野を対象にした学会賞だけでなく,新しい賞を創設するなどして広い意味での応用分野を応援することを考えてほしい.
(松野理事長)
本日は広い範囲にわたる提起があった.難しいのは『天気』をどう読みやすいものに改善していくかという問題だが,まずそのあたりから最初にやっていきたい.気象庁の現場や気象予報士に学会が情報を流す役割を果たせればと思う.
(真鍋会員)
気象学会はこれまでも,いろいろ重要な問題についてシンポジウムをやられており,それを『天気』で興味深く読ませていただいている.できれば,シンポジウムと連動してワークショップをやり,そこで結論を出して日本政府に要望書を出すような活動をやられてはどうか? 日本は人工衛星の分野等で,今後も世界に貢献する役割を求められる.科学的問題を提起し,その解決のためにどのような人工衛星が必要かなどについて,学者だけでなく,役人にも参加してもらってワークショップを行い,国の decision Making に参加していく必要があるのではないかと思う.アメリカでは今,温室効果の理論が論争の的になっているが,この時点でいただく朝日賞は私だけでなく,地球環境問題の研究者全体にとっても励ましになり,私を推薦して下さった日本気象学会に心からお礼を申し上げたい.また,このような大変興味深い会議に招いていただき,本当にありがとうございました.
(小倉理事)
本日は貴重なご意見をたくさんいただきありがとうございました.今後,理事会として具体化を検討していきたいと思います.長時間ありがとうございました.