公開気象講演会2022

2022年公開気象講演会『線状降水帯のことを詳しく知りたい』

2022年度もオンラインで公開気象講演会を開催します.気象学会員でなくても参加できますので,お知り合いの方々をお誘いの上,多数,ご参加いただきますようお願い申し上げます.

日時: 2022年11月13日(日)14:00~17:00
開催形式:オンライン(Zoomウェビナーを利用)
主催: 日本気象学会 教育と普及委員会
後援: 一般社団法人日本気象予報士会
参加費: 無料
定員:500名(先着順)※多くの方にお申込みいただいたことから、上限を上げました。
申込み:定員になりましたので、申し込みを締め切りました。
申込み締切:2022年11月10日(木)(ただし定員になり次第締切)
問合せ先:日本気象学会 教育と普及委員会 msj-ed_2022[at]metsoc.jp([at]は@にしてください)

 今回のテーマは今話題の「線状降水帯」です.今年も8月に山形県や新潟県で線状降水帯が発生し,大雨特別警報が発表されました.また,9月には台風15号の接近前に愛知県や静岡県で相次いで線状降水帯が発生し,記録的な大雨が降りました.
 そこで,線状降水帯の定義や特徴,メカニズム,および予報システム研究の現状と将来等について,専門家の方々に詳しく解説していただきます.

1. 集中豪雨と線状降水帯  加藤輝之(気象研究所)
 日本各地で3時間降水量200mmを超えるような集中豪雨がしばしば観測され、地滑りや洪水といった災害を引き起こします。そのうち、およそ半分(台風本体によるものを除けば3分の2)が「線状降水帯」によってもたらされています。本講演では、「線状降水帯」という用語の由来から発生メカニズム(バックビルディング型形成)、大雨時での線状降水帯の寄与度、線状降水帯が発生しやすい条件などについて解説します。

2. 線状降水帯の最新観測・予測技術による自治体の避難判断支援に向けた実証実験  清水慎吾(防災科学技術研究所)
 内閣府・戦略的イノベーション創造プログラム「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」において、線状降水帯の観測・予測技術の開発プロジェクトを防災科学技術研究所等の研究チームが実施してきました。研究チームは線状降水帯の自動検出技術開発を行い、その技術に基づき、気象庁の「顕著な大雨情報」が2021年に運用開始され、線状降水帯の見逃しを防ぐことが可能となりました。より早期避難を実現するために、最新の水蒸気観測網を活用した予測技術開発を進め、自治体との実証実験で精度検証を行い、予測技術の民間気象会社での社会実装を目指しています。

3. 気象庁における線状降水帯の解析・予報の取り組み  黒良龍太(気象庁)
 気象庁では、昨年から線状降水帯が発生したことをいち早くお知らせする「顕著な大雨に関する気象情報」の提供を開始しました。今年6月からは線状降水帯による大雨が発生する可能性がある程度高い場合に、半日程度前から気象情報の中で呼びかけています。この現象の予測は難しいため、研究機関や大学と連携し技術や情報の改善に取り組んでいます。これら情報の利用や運用、今後の改善に関する気象庁の取り組みについて話題提供します。

4. 地方局から見た線状降水帯をはじめとした気象情報について  岩永哲(中国放送)
 近年、甚大な大雨被害が繰り返される中で、マスコミ側も気象情報に対する意識は大きく変わりました。一方で、新たな情報が次々と作られ、昔と比べると様々な気象情報や避難情報が発表される中で、記者やデスクがどれだけ情報を理解して、うまく活用できているかは疑問が残ります。この10年で、広島土砂災害(2014年)と西日本豪雨(2018年)の2つの甚大な豪雨災害で200人を超える犠牲者が出ている広島も例外ではありません。東京のキー局とは違う、地方のローカル局の現状や、災害対応に当たる中で感じたことについて話ができればと思っています。

5. パネルディスカッション・司会 内藤邦裕(ウェザーニューズ)
 講演された加藤輝之さん、清水慎吾さん、黒良龍太さん、岩永哲さんにご登壇いただき、視聴者の皆様からの疑問、質問や要望等を踏まえて、議論を行います。


□ 過去の公開気象講演会

2021年 「命を守る身近な気象情報」
2019年 「新元号を迎えて~平成の30年間を振り返り、新時代の気象災害に備える~」
2018年 「台風の強度~台風災害の軽減に向けた航空機観測~」
2017年 「「大雨災害」に備える」
2016年 「台風災害 ~台風列島でどう生き延びるのか?~」
2015年 「気象情報のビッグデータ時代の幕開け」
2014年 「局地風の世界」
2013年 「将来の再生可能エネルギーと気象」
2012年 「地球温暖化問題における科学者の社会的役割」
2011年 「航空安全のための気象学」
2010年 「防災情報の活かし方を考える」
2009年 「数値予報の過去・現在・未来~数値予報現業運用開始50周年記念~」
2008年 「地球温暖化とその対策 ~ノーベル平和賞と横浜市~」
2007年 「災害をもたらす気象~大雨・竜巻・台風~」