近年,気象学研究におけるデータ同化の重要性が増してきています。データ同化は,数値予報のためだけではなく,観測的研究と数値シミュレーション研究を融合した研究手段を提供するものでもあります。このようなことから、国内においてもデータ同化への関心が高まりつつあり,現業数値予報機関だけでなく,大学や研究機関でもその研究に取り組むところが現れてきています。本書は,このような状況に応えるために,データ同化に関する最新の参考書として企画されました。
理論編では,データ同化の基礎知識と,最新のデータ同化法である変分法とカルマンフィルタについて詳しく解説し,応用編では,気象庁の現業データ同化システム,日本発の長期再解析JRA-25,及びメソ気象への応用に関する最新の研究成果を紹介しています。本書は、データ同化に興味を持つ初心者から,気象学研究に応用する上級者まで、幅広い研究者の役に立つでしょう。
【目次】
- 第1章 データ同化入門
- 1.1 はじめに
- 1.2 観測データ
- 1.3 データ同化法の歴史
- 1.4 統計的推定論
- 1.5 線形最小分散推定
- 1.6 背景誤差共分散行列の働き
- 1.7 解析予報サイクル
- 1.8 追加観測データの効果
- 1.9 D値統計
- 第2章 変分法
- 2.1 はじめに
- 2.2 3次元変分法
- 2.3 4次元変分法
- 2.4 アジョイント法
- 2.5 最小値探索アルゴリズム
- 第3章 カルマンフィルタ
- 3.1 はじめに
- 3.2 カルマンフィルタ
- 3.3 誤差補空間カルマンフィルタ
- 3.4 アンサンブル・カルマンフィルタの実装
- 3.5 EnKFの今後の改良点
- 3.6 まとめ
- 第4章 気象庁データ同化システム
- 4.1 はじめに
- 4.2 観測データと解析前処理
- 4.3 全球解析
- 4.4 メソ解析
- 第5章 長期再解析 JRA-25
- 5.1 長期再解析の意義と歴史
- 5.2 JRA-25のデータ同化システム
- 5.3 JRA-25の特性
- 5.4 長期再解析の課題と展望
- 第6章 メソ気象とデータ同化
- 6.1 はじめに
- 6.2 雲解像度データ同化による深い対流雲の研究
- 6.3 地上GPS観測網による可降水量の同化
- 6.4 屈折率のデータ同化システムの開発
- 6.5 衛星搭載マイクロ波放射計データの同化
【編集】露木 義・川畑拓矢 277ページ,2008 年2月29 日発行 【価格】会員:3,400 円,会員外:5,000 円 |
気象研究ノート編集委員会