気象研究ノート第221号「気象学と海洋物理学で用いられるデータ解析法」

 気象学・大気科学と海洋物理学におけるデータ解析の重要性は言うまでもない。大気・海洋のデータは一般にとても膨大なものである。そこから直接にある現象の特徴を取り出すことは不可能である。解析法を知らないと膨大なデータを前にして途方に暮れるばかりである。現象にあった解析法を用いることによって,生のデータからは見えなかった現象の特徴をきれいに取り出すことができる。現代の大気科学・海洋物理学は数多くの解析法を持っており,そのなかにはかなり複雑な解析法がある。これらを網羅的に,そして系統的に知ることは現象を見る上でたいへん重要なことである。大気・海洋分野で使われる解析法を広く対象とした一般的なデータ解析法の教科書がないので,本書はそれらをていねいに記している。
 また気象学・海洋物理学におけるデータは時系列を典型として多くの場合独立ではないが,それに触れている本は数少ない。独立であれば簡単な解析も,独立でなくなった途端一気に困難になることが多い。本書では独立でないデータの解析法に関してもかなり一般的に示されている。
 このように本書は気象学・海洋物理学以外の分野で,多くの解析法を知りたい人や独立でないデータを扱う人にとっても,格好の本であろう。この本によって,これまで直面していた困難を克服できたり,新たなそして詳細な解析法を知ることによって研究が発展すれば,著者にとってこの上ない喜びである。
(著者:伊藤久徳、見延庄士郎)

【目次】

  • 第1章 基礎
  • 第2章 確率と確率を表現する関数
  • 第3章 推定
  • 第4章 検定
  • 第5章 モンテカルロ法と時系列モデル
  • 第6章 簡単な時空間解析
  • 第7章 時間フィルタリング
  • 第8章 スペクトル解析
  • 第9章 局所的な変動の解析とウェーブレット解析
  • 第10章 EOF解析
  • 第11章 SVD(特異値分散)解析
  • 第12章 その他の解析
  • 付録A フーリエ解析
  • 付録B 行列計算
  • 付録C 推定・検定に用いる確率分布の定義式と関連する関数
  • 付録D いくつかの導出
  • 付録E 位相空間
  • 付録F 最尤推定法
【著者】伊藤久徳、見延庄士郎
263ページ、2010年9月16日発行
【価格】会員:3,400円,会員外:5,000円

気象研究ノート編集委員会